生徒が質問に来たときに、私は生徒をできるだけ褒めるようにしている。
質問するという行為そのものが積極性の表れであることを知り、その姿勢を身につけて欲しいからだ。
(この習慣は大人になっても間違いなく活きる。)
また、質問対応をするなかで「今のは良い質問だね!」と褒めることがある。
そんなやりとりを繰り返しているうちに、生徒たちのほうから

今のは良い質問ですか?
と聞いてくるようになった。
そこで「『良い質問』とはどういう質問か、定義していなかったな」と気づき、良い質問について考察してみた。
今のところ、私は次のような質問が良い質問だと考えている。
① 因果関係を追求する質問
まずは、① 因果関係を追求する質問だ。
「因果関係」とは「二つ以上の物事の間にある原因と結果の関係」である。
たとえば、社会では「その昔、スペインの植民地だった」から「キリスト教徒が多い」とか、「(海から遠い)内陸部である」から「砂漠が広がっている」のように、原因と結果の関係がたくさん出てくる。
教科書や参考書に出てくる数多くの知識を何の関係性も意識せずに一つずつ覚えていくのは効率が悪いし、記憶に残りにくい。
そして何より納得感が無いので、勉強していて面白くない。
だからこそ、因果関係を捉えることが大切なのだ。
英語であれば、



なんでこの英文で、この和訳になるんですか?
理科であれば、



なんで気圧が下がると温度が下がるんですか?
数学であれば、



なんでこの式からこうなるんですか?
など、自分の中で因果関係が捉えられないものを追求する質問が良い質問と言える。
② 矛盾を追求する質問
次は、② 矛盾を追求する質問だ。
矛盾とは「つじつまが合わないこと」である。
みんなは、答えを書いたり選んだりするときに「ここにこう書いてあるから答えはウになる」とか「質量保存の法則から答えは1.6gになる」のように、根拠を持って答えているだろうか。
勉強では「なんとなく」「たぶん」「勘で」を減らしていくことが大切だ。



この考え方だとこの順番になるはずなのに、なんで逆なんですか?
とか



私はこう考えたんですけど、なんで答えがこうなるんですか?
など、
自分の知識や考え方、仮説に矛盾するものを追求する質問が良い質問である。
③ 相違点を追求する質問
また、③ 相違点を追求する質問も良い。
勉強をしていると似ている言葉が出てくる。
それらをどう使い分けるか。
そういうことが気になる「きめ細かい」性格が勉強には向いている。
国語であれば、



『獲る』と『採る』はどう違うんですか?
理科であれば、



沸騰と蒸発ってどう違うんですか?
英語であれば、



watchとseeってどう違うんですか?
など、
似ている語句の使い方、ニュアンスの違いを追求する質問も良い質問だと言える。
④ 具体性を追求する質問
たとえば「魚介類」という言葉を聞いたときに、サンマやエビ、ホタテなどをイメージするだろう。
同様に「両生類」という言葉を聞いたときに、カエルやイモリをイメージするだろうか。
「形容詞」という言葉を聞いたときに、かわいい、大きい、嬉しいなどをイメージできるだろうか。
勉強が得意な子は、抽象的な言葉を見聞きしたときに、無意識レベルで具体的なものを思い浮かべている。
そして、具体的なものを思い浮かべられるからこそ、話が理解できる。
数学であれば、



同様に確からしいってどういうことですか?
社会であれば、



『一票の格差』ってどういうことですか?



フォッサマグナってなんですか?
など、
説明を読んでも具体的なイメージが思い浮かばないものを追求する質問をしよう。
⑤ 再現性を追求する質問
最後に、⑤ 再現性を追求する質問だ。
前回も伝えたが、勉強では「なんとなく」「たぶん」「勘で」を減らしていくことが大切だ。
とくに数学では、数字や条件が変わっても同じように対応できる(再現できる)ようにしておくことが求められる。



どうしたらこの解き方が思いつくんですか?



なんでこの公式を使おうって思うんですか?
など、
次に類題が出てきたときに「自分ひとりの力で」再現できる状態を追求する質問が良い質問だ。
最後に
最後に質問について別の視点を付け加えておこう。
質問とは、実のところ結構「怖い」ものである。
なぜなら質問のレベルによってその人の実力が丸裸になってしまうからだ。
持っている知識、思想、人間的な深み、性格など多くのことが詳らか(←読めない人は調べてね)になる。
逆に質問の内容により「おぬし、やるな」と実力を認められることもある。
それが質問という行為だ。
もちろん、今の君たちはそこまでのプレッシャーを感じる必要はない。
良い質問もそうでない質問も、気にせずにどんどんすれば良い。
そうやって色々な失敗や成功をしていくことが一番大切な時期なのだから。
ただ、大人になると、そういう場面もあるということを頭の片隅に入れておいて欲しい。