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己の価値観のみで優劣をつける未熟な精神性
もう随分と前の話になるが、普段からものすごく勉強を頑張っている中3生がいた。
テストや通知表の成績も一般的に十分優秀とされる数字だった。
私は塾講師だから、生徒が頑張っている姿を見ることは基本的に前向きに受け取るが、その生徒が勉強している様子を見ていて一抹の不安を覚えた。
あまり前向きに勉強しているように見えず、むしろ苦しそうに見えることが多かったのだ。
少し様子を見ていたが、やはり気になったので質問対応が終わったあとに少し話を聞いてみた。
○○さんはすごく勉強を頑張っているけれど、その頑張ろうという気持ちの源はなんだい?
すると、この子はこう答えた。
学校で同じクラスの子が勉強のことで私を馬鹿にしてくるんです。その子に負けたら、また何を言われるか……。
どのような言葉、口調、表情で言われているのか、どんな場面で、どれくらいの頻度で言われているのか、詳しいことは分からない。
ただこの子のクラスメートに勉強のことでマウントを取られ、それによってこの子が苦しんでいるのは間違いなかった。
もしあなたが私の立場だったらどのように声をかけるだろうか。
「悔しいのならば、勉強でその子に勝って見返してやれ!」
こんな風に発破をかけるだろうか。
私はその子にこう伝えた。
そのクラスメートは、『勉強ができる/できない』という一つの価値観を持ちだしてきて、あなたに対してマウントを取っているんだよね。私のほうがあなたより優れている、と。
それが勉強であれ、スポーツであれ、容姿のことであれ、何か一つの価値観(ものさし)をもとに他者は自分よりも劣っていると決めつける態度は、人として未熟な精神の持ち主がやることだと私は思いますよ。
精神的に成熟した人間は、多様な価値観があることを知っています。世の中にはいろいろな人間がいること、また一人の人間のなかにもいろいろな要素があることを理解しています。そういう人は、人間の一面だけを切り取って安易に優劣をつけて他者に対してマウントを取るようなことはしません。
そんな子の言うことは気にしなくて良いし、私はあなたにそういうことをする人間になってほしくないな。
世の中には当たり前のように競争があって、何かしらの結果が出る。
学校や塾のテストには点数や順位がつくし、試験には合否がつく。
100m競走にもタイムや順位がつく。
自分と他者を比較することからは逃れられないと思う。
しかし、そのうちの一つを切り取って自分と他者の間に優劣をつけるような思考を持っている限り、他者と自分自身、双方を本当の意味で幸せにすることはないと私は思う。
私は教育に携わる人間の一人だ。
その中でも受験という競争を控えた子どもたちを相手に仕事をしている。
だからこそ、子どもたちが間違った考えを持たないように、あるいはそのような考えを無意識のうちに助長するようなことが無いように、細心の注意を払って接したい。
塾生たちが勉強をすることによって自分の知識が広がり、能力が高まり、自分に対して自信を持つことは良いが、その裏返しで他者を蔑ろにするようではいけない。
それこそ教育の敗北だ。
この記事を書いた人
進学塾unitの塾長。数学・英語・理科担当。生徒と保護者、スタッフの笑顔を見るために日々邁進中。基本的にいつも機嫌が良く、無駄に元気。
趣味:将棋(将棋ウォーズ1級)、コーヒーを飲みながらカフェで数学、ダイエット 特技:リバウンド
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Twitterはこちら R_makes_rb
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