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第22回 ~本を読まないなら漫画を読めばいいじゃない~【読書の入り口】

マンガ

(unit通信 2023年3月号バックナンバー)

最近塾生の一部である漫画が流行っており、休み時間などに読んでいる姿をよく見かける。

そのある漫画とは『スラムダンク』だ。

なぜ流行りだしたかというと、塾長が全巻買ってきて折に触れて推薦(すいせん)しているからなわけだが(笑)、いずれにせよ漫画を読むというのは大変結構なことであると思う。

そこで私からもおすすめの漫画を紹介しようと思う。

音が聞こえる漫画

今回紹介するのは、現在映画公開中で以前のコラムでも名前を出した上原ひろみ氏が劇中(げきちゅう)の音楽の演奏・プロデュースを行っていることでも話題の『BLUE GIANT』。

主人公の宮本大(みやもとだい)が世界一のジャズプレーヤーを目指す物語だ。

現在は続編の『BLUE GIANT SUPREME(第二部)』『BLUE GIANT EXPLORER(第三部)』まで出ていることからも、その人気の高さが(うかが)える(私のお気に入りは第二部です)。

そんなこの漫画の白眉はくびたる所以ゆえんの一つが音に関する描写だ。

ちまたでは「音が聞こえる漫画」と評されており、演奏シーンでは不思議と頭の中に大のサックスの音が鳴り響く。

漫画の1コマ
石塚真一.BLUE GIANT6巻.小学館,2015,kindle位置121.

もちろん読者各々の頭で流れる音は一つとして同じ旋律せんりつではないだろうが、その全てが大の、そしてこの漫画が奏でる音なのだ。

読者はそれを読むとき皆、空想上のジャズプレーヤーとして即興音楽インプロビゼーションを奏でる。

常に全力を底まで出し切る

さて、私がこの漫画で秀逸(しゅういつ)だと思うのが巻末のおまけだ。

物語はまだ完結していないものの、大がおそらく世界一のジャズプレーヤーとなったあとの後日談として、大が出会ってきた人々へのインタビューが描かれている。

そこを読んでいつも感じられるのは、大がたくさんの人に支えられてきたこと、そしてそれだけでなく、大自身もそれらの人々の心の支えであり続けているということだ。


人は得てして失敗に傷つくことを恐れて力をセーブしたり、「全然勉強してないわー」などと予防線を張ったり、試験前にあえて掃除を始めてみたりする。

そのようにして失敗しても言い訳が立つようにすることで自尊(じそん)(しん)を保つのだ(これらは心理学の用語で「セルフ・ハンディキャッピング」と呼ばれる)。


しかし、大は演奏においていつも、今までの成功も失敗も過去に置き、そして後先のことなどは考えず、その時その時の全力を底まで出し切る。

作中ではたびたび周囲から「シリアス」だと言われ、時にはその価値観(かちかん)が他のバンドメンバーと対立することもある。


しかし、彼がそのような生き方だからこそ、その姿に心を打たれ(した)ってくれる者や支えとなってくれる者が集まるのだろう。

とうもの言わざれども下おのずかみちを成す(ももすももは何も言わないが、実がおいしいので人が集まり、その下には自然に道ができる。りっぱな人のもとにも自然と人が(した)い集まることのたとえ。)」という故事成語は彼のためにあるのかもしれない。

そうだ、私に子供が生まれたら「生田目桃李」と名付けよう。

俳優として大成し、有名女優と結婚しそうな予感がする。

失敗を恐れぬための自尊心

しかし、皆が大のように生きられるかというとそうではない。

彼には失敗を恐れぬほどの強烈な自尊心が最初から備わっているように思う。

根拠(こんきょ)のない自信というものが常に顔をのぞかせている。


後先の失敗を考えずに全力を出し切れというのは強者の理論でしかないのかもしれない。

失敗を重ねることで強くなるというのも強者の理論で、失敗を重ねるほどに自信を失い、より失敗を恐れるようになる子だっているだろう。

事実、最近の子供たちを見ていると、自尊心や自己肯定感が低い子が多いように感じる。

「どうせやってもうまくいかないしなあ。」というような心持ちでいる子が増えている気がする。

そういった子たちに成功体験を積ませ、成長の中で壁に当たっても倒れてしまわぬための支柱を、失敗を恐れぬほどの自尊心を身につけさせることができるのこそ我々塾講師だ。


卒業してからも会いに来てくれたり、進路が決まったことを報告しに来てくれたりする子もいるが、そんなときに「塾で過ごした日々は少しでもこの子たちの支えになれていたのかもしれない。」と嬉しくなる。

今春塾を旅立つ子たちも多いが、仮に今後会うことがなかったとしても、大のようにその子たちにとって塾で過ごした日々が心の支えとして残り続けるような、そんな存在でありたい。

「何を読むか」ではなく「どう読むか」

最後に、今回は本ではなく漫画の紹介をしたが、結局のところ「何を読むか」「そこに何が書かれているか」というのは学びの契機(けいき)でしかない。

意外に思われるかもしれないが、私は「漫画ばかり読まず本を読め。」などとは思わない。

大切なのは読者が何を学び取ろうとするかだ。

たとえその学びが深読みであったとしても、それを許容(きょよう)する(ふところ)の深さを本も漫画も備えている。


日本には良質な漫画が多い。

私自身大切なことはこの漫画から教わった、というようなことも多々ある。

漫画を読むことが読書への入り口になることだってあるだろう。

塾には他にもたくさんの本や漫画が置いてあるので、気になるものがあればぜひ手に取って読んでほしい。


この記事を書いた人

生田目
なまため
(イラストは塾生作)

進学塾unitの副塾長。国語・英語・社会担当。2019年には開倫塾主催の全国模擬授業大会の国語部門で優勝。塾において軽視されがちな国語教育の必要性を少しでも感じてもらえるよう、色々書いております。

趣味:ダーツ(カウントアップ860)、釣り(海・川)、野球(西武ライオンズ)

進学塾unitの副塾長。国語・英語・社会担当。2019年には開倫塾主催の全国模擬授業大会の国語部門で優勝。塾において軽視されがちな国語教育の必要性を少しでも感じてもらえるよう、色々書いております。

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Twitterはこちら @unit_nama

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