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生田目の国語教育随想 第8回 ~言葉を貯める~

(unit通信1月号バックナンバー)

授業中や当コラムでもそうだが、私は普段から子供たちの触れる機会が少ない語彙をなるべく使いたいと思っている。




そもそも、語彙力がないとどのような問題が起こるのか。

中3生には話をしたが、「物が先か、名前が先か」という有名な論争がある。

名付けられることを待っている「物」が先に存在し、それに後から人間が「名前」をつけているとする考え方、これを名称目録(カタログ)的言語観という。

こちらは日常生活を送る上での実感に近いように思える。


しかし、「近代言語学の父」と称されるスイスの言語学者ソシュールの登場から、パラダイムは大きく転換することとなる。

フェルディナン・ド・ソシュール(Ferdinand de Saussure、1857年11月26日1913年2月22日[1])は、スイス言語学者言語哲学者。「近代言語学の父」といわれている(ここでいう「近代」とは、構造主義のこと、特に「ヨーロッパにおける構造主義言語学」を指している。それとは全く異なる「アメリカ構造主義言語学」もあるので注意。また、現代の言語学の直接の起こりは第二次大戦後であり、この「近代言語学」との直接の連続性は低い)。彼は、この世に名付けられることを待っている「物」など存在せず、「名前」をつけることで初めて存在を認識できるようになると考えた。

フェルディナン・ド・ソシュール」(最終更新 2021年10月6日 (水) 09:49 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』。
https://ja.wikipedia.org/wiki/OECD%E7%94%9F%E5%BE%92%E3%81%AE%E5%AD%A6%E7%BF%92%E5%88%B0%E9%81%94%E5%BA%A6%E8%AA%BF%E6%9F%BB

彼は、この世に名付けられることを待っている「物」など存在せず、「名前」をつけることで初めて存在を認識できるようになると考えた。

我々は「愛」という名前がついているからこそ、それを感じ、またそれについて考えることができる。

人間は言葉を用いることでしか思考することができないのである。


アマゾンの奥地にピダハンという少数部族がいる。

彼らは数字や色、過去や未来などを現す言葉を持たない。

言葉として存在しないということは、概念として存在しないということであり、したがってまだ見ぬ未来のことについて考えることができない。

だから彼らは飢えに苦しんでいたとしても食料を探しに出ずに、一日踊って過ごすということをするそうだ。

彼らにとっては現実として目の前にある今をどう過ごすかが重要なのである。




我々が行う出席アンケートにおいて、「冬休み中印象に残った出来事」のようなことを聞くときに、「〜に行って楽しかったです」という非常に解像度の低い答えが返ってくることが多い。

中学生の回答でそれだと、「思い出のfpsが紙芝居レベルだ」と揶揄することもあるが、根本の原因は語彙力の不足にある。

名称目録的言語観の立場から考えれば、「本当は色々な思い出があったのだけれど、それを表現する言葉が出てこない」という現象と理解できる。

しかし、ソシュール的言語観の立場から見れば、彼・彼女らの中には「楽しかったという言葉で十二分に形容できるほどの、薄っぺらい体験しか存在していない」ということになってしまうのである。


したがって語彙力をつけることは、私たちの精神世界の解像度や彩度、コントラストを上げていく行為に他ならない。


ではどうすれば語彙力が身につくか。

私の実感として「聞いたことのない語彙」と「聞いたことのある語彙」では、その定着度に大きく差があるように思う。

たとえば地図を覚えるときに、全く見知らぬ土地での経路を覚える時より、知った道に出た時の「ああ、この道に出るのか」となるときのほうが覚えが良いはずである。

語彙についても、聞いたことのない言葉をひたすらドリルのようなもので意味とセットで暗記していくより、「この言葉ってこんなふうに使うものだったのか」となるほうが定着が良い。

聞いたこともない言葉を覚えるより、言葉の存在さえ知っていれば、案外意味は後からついてくるものである。


現代の子たちは活字離れしているというが、私の授業や当コラムを通して、少しでも「意味はよくわからないけど、聞いたことはある言葉」を少しでも増やしてもらいたい。

いつもそんな願いを込めてこのコラムを書いている。

平易な言葉で説明するということをあえてしていないので、分からない言葉があれば子供たちにはぜひ調べてほしい。

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